健診を“人生の入り口”に
「健診は受けたけれど、そのままにしてしまった」――そんな経験、ありませんか?
受診される方からは、「症状がないので大丈夫だと思った」「どの診療科に行けばよいのかわからなかった」といった声も聞かれます。再検査や精密検査を受けずに放置されていることも少なくありません。
例えば、胸部レントゲンで異常が見つかった場合、肺がんや肺炎など重大な疾患が隠れている可能性があり、放置すれば命に関わることもあります。早期に精密検査を受けていれば軽い治療で済んだにもかかわらず、受診しなかったことで、次の年には病状が進行していた――こうしたケースも実際にあるのです。
一方、健診で早期がんが発見され、すぐに治療につながった場合には、命に関わることなく社会生活を通常通り送ることができることもあります。結果として、身体的・精神的・金銭的にも大きなメリットを得ることができるのです。
健診に関わる医師として、「あのとき精密検査を受けていれば…」という事態は、何としても避けたいところです。
健診の“その後”に本気で向き合う
そこで、鈴鹿回生病院 健康管理センターでは、「健診を受けっぱなしにしない」ことを重視しています。健診当日には、医師による結果説明に加え、必要に応じて保健師が生活習慣の見直しなどを丁寧にサポートします。当日の結果から精密検査が必要と判断されれば、院内の専門医に即時紹介する体制も整えています。なお、健診結果は複数の専門医が関与して作成されるため、診察時と結果内容が異なる場合もあります。診察時に指摘がなかった場合でも、安心せず必ず結果をご確認ください。当院では、健診結果とともに、精密検査が必要な項目に関しては専用の依頼書をお送りしています。結果が届いたら、必ず内容をご確認のうえ、遅くとも3か月以内には医療機関を受診してください。私たちは、健診結果が届いたその時点こそが、行動のスタート地点だと考えています。
精密検査は、早期発見のチャンス
健診で異常が見つかっても、体調に変化がないと「放っておいても大丈夫」と思いがちです。
しかし、病気の中には、症状が現れたときにはすでに進行しているものもあります。特にがんや生活習慣病は、早期に見つけて対処することで、命を守ることができます。
「何もなければ安心」「もし何かあっても、早く見つけてよかった」――それが精密検査を受けた方々の実感です。
現在は「2人に1人ががんになる」と言われる時代。私たちは、早期発見・早期治療につなげられるよう、全力でサポートします。
当センターだからできる“即対応”
当センターの強みは、病院に併設されていること。精密検査が必要な場合は、院内の専門診療科へ紹介が可能です。急を要する場合には、当日中の診療予約も可能です。
以下に、検診でわかることや、その後の精密検査の一例についてご紹介していきます。
●胸部レントゲン検査
肺炎、肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸など、呼吸器の疾患の有無、その程度がわかります。胸部X線 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
胸部CT検査が適しています。当院の場合、鈴鹿回生病院附属クリニック内科で予約不要で受診してください。必要に応じて専門診療科への紹介をさせていただきます。
●上部消化管エックス線検査
造影剤のバリウム液を飲んで、食道から胃、十二指腸までをX線写真で映し出す検査です。胃、十二指腸のポリープ、潰瘍(かいよう)やがんなどが発見できます。上部消化管X線 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
上部消化管内視鏡検査が適しています。健診センターを通して2次検査の予約が可能ですが、持病で内服中の方は、鈴鹿回生病院 消化器内科に受診の上、検査予約をしてください。
●上部消化管内視鏡検査
食道がん,逆流性食道炎,胃炎,胃潰瘍,胃がん,胃ポリープ,十二指腸潰瘍などの病気の発見に有用です。上部消化管内視鏡 | 日本人間ドック・予防医療学会
健診時に生検(組織検査)を行い、悪性を疑わせる細胞が出た場合は、お電話で受診を促すことがあります。必ず放置せず、消化器内科に受診してください。
●便潜血検査
一回でも陽性(+)の場合、消化管の出血性の病気、大腸ポリープ、大腸がんなどが疑われます。便 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
下部消化管内視鏡検査が適しています。健診センターを通して2次検査の予約が可能です。大腸内視鏡検査および、検査の説明のための診察予約をお取りできます。
●乳がん検診
乳房の病変をX線(マンモグラフィー)および乳腺エコーをつかって調べます。マンモグラフィー・乳腺エコーなどの画像検査は、カテゴリーの1~5に分類され、一般的にはカテゴリー3で経過観察か精密検査、4・5で精密検査が必要となります。オプション検査:乳房 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
乳腺外科に直通電話にて予約が可能です。乳腺外科では生検(組織検査)にも対応しています。
●子宮頚がん検診
膣口から細い器具を挿入し、子宮頸部の粘膜から細胞を採取して、 顕微鏡で調べる検査です。細胞診検査により子宮頸がんの早期発見につながります。トリコモナス膣炎、カンジダ膣炎などの感染がわかります。オプション検査:婦人科検診 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
婦人科にて予約不要で診察が可能です。
●前立腺がん検診
血液検査で行う前立腺腫瘍マーカー検査(PSA)検査で前立腺疾患の有無がわかります。高値である場合、前立腺肥大、前立腺癌など前立腺疾患が疑われます。オプション検査:前立腺 | 日本人間ドック・予防医療学会
【精密検査を受けるなら】
火曜日午後に泌尿器科で実施している前立腺PSA外来にて、専門医による予約診療が可能です。
こうした体制により、当院で健診を受けられた場合には、「どこに行けばいいか分からない」「予約の手続きが面倒」といった不安も、最小限に抑えることができます。
健診は、未来の健康を守る投資
健診は、「今の体調確認」だけではなく、「これからの健康を守るための投資」でもあります。 当センターでは、人間ドック専門医・臨床遺伝専門医・アンチエイジング学会専門医などの多分野に精通したセンター長が、将来的には生活背景や遺伝リスクに応じた個別対応型健診の導入を見据えています。 その第一歩が、今受けている健診であり、そして健診後の行動です。
健診を「自分ごと」にするために
私たちは、健診を通じて「どう生きたいか」を考えるきっかけを提供したいと考えています。
異常値が出たとき、そこから始まる選択肢があります。すぐに検査を受ける、生活習慣を見直す、医師と相談する――どれもあなたの未来を守る大切な一歩です。
健診を「受けて終わり」にせず、「これからの健康を考える始まり」として、ぜひ活用してください。
最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。
健診は「今は症状がない」からこそ、将来の健康を守るための大切な一歩です。
せっかく健診を受けても、精密検査が必要とされた項目を放置してしまうと、本来なら早期に治療できたはずの病気が進行し、健康だけでなく人生そのものにも影響を及ぼす可能性があります。
健診結果を“受けっぱなし”にせず、自分の体の声にきちんと耳を傾けてください。
早期発見・早期治療こそが、未来のあなたを守る力になります。
ぜひ、精密検査をためらわず受けていただきたいと願っています。
インタビュー医師紹介
健康管理センター長 消化器内科医
1998年3月 徳島大学医学部卒業。
三重大学医学部附属病院、山本総合病院(現・桑名総合医療センター)で研修後、亀山市立医療センターにて地域医療に従事。
その後、三重県立総合医療センターにて連携大学院生として診療・臨床研究に携わり、医学博士号を取得。
2017年より鈴鹿回生病院に勤務し、2018年4月から現職。予防医学の実践を通じて地域住民の健康増進に取り組む一方、消化器内科専門医として外来診療も継続中。
保有資格・所属学会等
●日本内科学会 総合内科専門医・指導医
●日本消化器病学会 専門医・指導医
●日本消化器内視鏡学会 専門医
●日本人間ドック学会 健診専門医・指導医
●臨床遺伝専門医
●日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
●検診マンモグラフィ読影認定医
●日本抗加齢医学会 専門医
●日本医師会 認定産業医